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どうでもよすぎる日誌
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あけましておめでとうございます。
やっと指の調子が戻りました。

お待たせしました。
前回の記事のクイズの答えは「ВРО-6-210 5.6」です。
回答してくれる人が一人もいなかったのは残念。まあ仕方ないね。

今回はかなりテキスト量が増えたので読みにくいと思う。
そのあたりは勘弁して欲しい。


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……
前から特殊なレンズが欲しかったんで購入したが、使えるようにするまでかなり面倒だった。

掲載にあたって由来なども載せるのは重要と考えてるので、いつも資料を調べてまとめるんだけど今回はかなり困った。
生産数も持ってる人も非常に少なく、過去に扱った日本のサイトも無かったのだ。


(記載した以外の情報を持っている方は是非ご教授いただきたい)




-----レンズ詳細-----
ВРО-6-210 5.6

コピー機用レンズとして少数しか生産されておらず、1993年のみ製造。
組み込まれていた機械は機種名など不明。
レンズは青緑色のマルチコートが施されている。

刻印は謎のロゴと「5.6-210 ВРО-6-210 И0001 12.91」となっている。
「И0001」は製造番号0001である。キリ番万歳。

「12.91」が何を指すのか不明。
同じロゴを持つОР-451に刻印で「489.5」とあり、こちらはマニュアル記載の焦点距離(Фокусное Расстояние)と合致している。
210と「12.91」で考えつくとしたら、せいぜい対角線画角だろう。
だとしたらイメージサークルは75mm程度になりそうだ。合ってるか分からんけど。


○スペック
レンズ名:ВРО-6-210 5.6
焦点距離:210mm
絞り:5.6/8/11/16/22/32/45(目盛りのみ)/64 15枚羽根
レンズ構成:4群6枚
マウント:M70P0.75
ヘリコイド:無し
製造工場:不明(可能性が高いのはKOMZ)



ちなみに製造番号0001は2015/07/20にウクライナのオークションサイトで630USDで売られたようである。
http://auction.violity.com/8924929-vro-1-6-210-mm-5-6-ochen-redkij-0001


-----到着から-----
マウントの情報が出てないものを買った。ほぼ衝動買い。
計測の結果、直径70mm、ネジ山ピッチ0.75mmという変態サイズだった。
覚悟はしていたが困りものだ。


出品はウクライナからだったので、商品状態に懸念があったが当たっていた。
説明ではUsed:Working condition。
前/中/後玉のスクラッチマークは記載が無く、内部の塵も無いとの事だったが存分にあった。
ウクライナからレンズ買うのは良くないかもしれない。まだロシアの出品の方がマシな感じ。
ブログに載せてないのも含めれば3連続で微妙な状態のを引いているのでね。


で、仕方ないから分解した。
分解は簡単で、外縁部のイモネジを緩めれば後は手で外せる。
内部はレンズのコバ以外に墨塗りは無い。
絞り自体は多少スムーズではないものの、異物感とかは無く実用レベルの状態。
中玉に1箇所気泡があった。


カメラとの接続はヘリコイドアダプターと延長筒のいつもの手を使いたいところだが、M70P0.75のマウントに合致するリングなどあるはずも無い訳で。使うには最終手段に出るしかない。

マウントアダプター自作を!


-----アダプター製作-----
で、自作するにしても手持ちの道具は限られている。
あるのは4軸デスクトップCNCと3Dプリンター。あとは工具だけ。
旋盤が使いたいところだが、無い。

何にしてもまずは設計が要る。
設計にはレンズの寸法がどうなっているか調べなければできないので、ひとしきり計測した。


業者に依頼するなら旋盤などでネジを切ってもらえば済むので設計図は簡単に済みそうだが、自分で作るなら簡単に切れないサイズのネジをどう扱うかが問題になる。



設計に当たっての条件3項を設定した。
●レンズをしっかり固定できること
●強度が利用上足りること
●M42マウントへ変換できること

このレンズは3本のM2イモネジでカニ目リングの緩み止めをしている。
この部分は強度的にも問題なさそう&重要性が低いので、穴を2mmから2.5mmに拡張してM3のネジをタップで切った。
筒状のアダプターにレンズを差し込んで筒の外からネジで留めてしまえば、レンズが脱落したり絞り操作で回転することがなくなる。

M42マウントへの変換は既存のジャンクレンズのマウント部分を取り出して流用することにする。

こんな考えで設計図を考えた。
結局は修正して簡易なものに作り変えたが・・・



設計したものが使えるかどうか検証するため、3Dプリンターで試作した。(10/07時点)

こうなった。
17-31mmヘリコイドを伸ばし、m42マクロチューブ2本分を使用してやっと15m程度にピントが合うようになった。
無限遠も出るが、とにかく重く扱いづらい。
試作品でおおよそ必要な長さが分かったので、36-90mmヘリコイドとマクロチューブを追加で注文した。


折角CNCを買ったのに使わない手は無い。
今回は自分で作る。


試作品が強度的にも問題なかったのでCNCで完成品を作る。
3Dプリンターで使ったSTLをCNC用にGコードへ変換して切削する。
まずは外側を削り出し、次に内側。
削り出せたら鋸で要らない部分を切り離す流れである。



CNCでガリガリ削り出した。材質は強度と耐食性のあるA5083を選んだ。


外側を15mmほど削ったところでタングステンの8mmフラットビットが折れてしまった。
途中で食い込んだ状態で動こうとして力がかかり折れたようだ。

結局、切り出すだけでビットは5本折った。
目的にあってないのを使ったからだと思う。ありえないぐらい表面ガタガタだし。



鋸で不要な部分を切るのはかなり手間。
材を置いて切るよりバイスで固定した方が楽なのでバイス購入。
しばらくは良かったが、うっかり左手人差し指の関節の上をザックリ切ってしまった。
このせいで製作が1ヶ月以上遅れる事となった。


分離したら傷やガタをルーターや耐水ペーパーで削って整える。
ねじ穴をドリルで開け、ジャンクから取ったM42マウントを固定する。


最終段階として内部反射を防ぐために塗装をする。
理想を言えば黒アルマイトをかけたいところだが、使用回数が少ないのに高価なキットを買っても薬液が無駄になってしまうので、代わりに塗装をする。

塗装が固まったらレンズを固定して完成。


外側はアルミ無垢で。


-----結局-----
費用はレンズ代込みで4万ほどにまで膨らんだ。かなり高くついてしまった。

ただし、設計を流用できるので他の安いロシア製大判レンズ用にアダプターも作れそうだ。
CNC操作の練習にもなったし、無駄ではなかったと思いたい。

次からはビットを正しいものでやろう・・・
そして、M42マウントは自分で切ろう。
材質はアルミじゃなくてエンプラにしよう。


唯一の救いは一応平面撮ってもピントが合うぐらいにはなった事。


-----使用感-----
先にも書いたが重い長いで操作性/運搬性は悪い。
何よりも重さと、焦点距離ゆえにブレやすく、撮影には根気が要る。
最短距離は60cmほどでそこそこ寄れるのは良いが、遠くの被写体は細部が潰れやすい。


適当に窓から見える景色を撮ったが、暗いのでブレる・・・
まともにテストできていないのでそのうち撮ったのを載せようと思う。


-----詳しく知るために-----
詳しく知るには同じシリーズの情報を得ることも必要になるので調べておいた。
先代のモデルとなるВРО-1-300は91-92年にかけて生産されたレンズで、LOMOのОР-451のコピー。
海外フォーラムでは、図面・設計図を拡大するためのコピー機用と推測されていた。
参考になりそうな情報源が乏しく具体的な機種などは不明。


現在ebayで出品されているので我こそはと思う人は買ってみては?
http://www.ebay.com/itm/Russian-BPO-1-300-5-6-300-mm-reproduction-lens-Excellent-0025-/271691912010


レンズ名:ВРО-1-300
焦点距離:300mm
絞り:5.6/8/11/18/22/32/64 15枚羽根
レンズ構成:4群6枚
マウント:M90P1
ヘリコイド:無し
画角:60度
イメージサークル径:692mm
重量:1.3kg
製造工場:KOMZ
レンズ中央解像力:15lp/mm
レンズ周縁解像力:10lp/mm


ОР-451とはマウント径が異なる(136mm)。
詳細は不明だが、ВРО-150も存在するらしい。


-----謎のロゴについて-----
 ロゴは「В」の中央線が張り合わせレンズになったデザインである。

刻印が掠れて不明瞭だったのでIllustratorで書き出した。

1)
ロシアレンズのロゴは大抵製造工場名が意匠に使われるので、普通に考えたら工場の頭文字だろう。
「В」を頭文字に持つレンズ工場で有名なのはVOMZ(Вологодский Оптико Механический Завод:ボログダ光学機械工場)だがロゴは異なる。
おそらく他の工場の頭文字でもない。

2)
同様の用途で使われたОР-451/ОР-451Мでも側面に同じロゴのある物が存在する。
このレンズはKOMZ(Козельский Оптико Механический Завод:カザン光学機械工場)で生産されたという記録があった。

3)
ВРО-1-300の添付書類にKOMZの品質管理部門の記載がある。



KOMZで作られていた一般向け製品や大判レンズなどにこの刻印が見つからなかったので、正しいのならKOMZのコピー機レンズ専用ロゴってところだろう。

思うに「В」は関連する語句/特徴の頭文字か何かだろう。
予想だが「再現(Воспроизведение)」ではないか?


-----補足-----
ОР-451の名称は付属マニュアルにも載っているが複製レンズ(Объектив Репродукционная)の頭文字。
http://www.oldlenses.ru/publ/reprodukcionnye_obektivy/obektiv_reprodukcionnyj_or_451/3-1-0-75

ОР-452という後継機も存在している。
http://www.oldlenses.ru/publ/reprodukcionnye_obektivy/obektiv_reprodukcionnyj_or_452/3-1-0-74

これらはコピー用レンズであるLOMOのО-2と共にРСФ-451やРЭМ-600Кといったコピー機で使用されていたという。

※現在oldlenses.ruは閲覧ができなくなっている。過去に存在した該当ページのURLを載せた。
インターネットアーカイブにもデータがなくGoogleキャッシュにテキストのみ残っている。
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質問には丁寧に回答するつもりです(丁寧すぎてウザイよな…)
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